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 湯川れい子 「平和とイラク攻撃を語る」  第9回学習会

湯川れい子(音楽ジャーナリスト)
(タイトルをクリックするとその項目にジャンプします)
 ・湾岸危機と9条の重み
 ・ベアテ・シロタの尽力
 ・戦争をめぐる地球規模の公開討論
 ・平和遂行への未曾有の事態
 ・平和への呼びかけを



湾岸危機と9条の重み

 私は音楽が大好きです。今日、私の詩をお渡ししましたが、詩人という位置づけもおかしいが、私が感覚的な人間だということです。これからは感覚的なことがどんなに大切かを再確認しています。

 私は今、湾岸戦争と今回のイラク攻撃の大きな違いについて、私自身も大きく違っていることを自覚しています。湾岸戦争ときは、情けないことに、CNNやBBCの放送を見ていても、へー!これが外国のニュースなのかということや、タリバンのアフガンの仏像破壊を見てもすごいのがいるんだという程度でした。しかし、湾岸戦争を通していろいろ学びました。

 今朝の国会中継のテレビを見ていて、小泉総理が「戦争には参加しない」、「戦後復興に力を入れる」、「パレスチナに5億円のカネを出す」と答弁していました。なんだかんだと言っても憲法「第9条」の重みは本当に大きいと思いました。

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ベアテ・シロタの尽力

 その第9条の問題もそうですが、女性や子どもの権利問題などで一生懸命力を尽くしたベアテ・シロタという女性(憲法のGHQ草案を作ったスタッフの一人)がいます。日系人と誤解されていますが、たまたま日本で生まれた100%外国人で、83歳。去年、来日し、私たちの「リーダーシップ・ワールドウイメン」にゲスト招待、憲法を作った時の話をいろいろ伺いました。

 彼女は憲法を女性や子どもの立場、人権、平和の観点から本当に積極的にかかわり、いかに自分が尽力したか、どう守ってほしいかを力説、強調して話してくれました。彼女は83歳ながら非常に元気なので、市民版憲法調査会でもお招きし、広く一般の人にも聞いてほしいと思います。

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戦争をめぐる地球規模の公開討論

 もう一つ、気づいたことがあります。それを是非、皆さんにお話ししたい。先般、国連事務総長補佐で現在、コスタリカ国連平和大学の名誉学長を務めているロバート・フラー博士の言葉です。サンフランシスコで平和に関する著作や教育活動、世界に貢献したことに対する賞をもらった80歳になる人です。賞をもらった時の彼のスピーチ。今回のイラク攻撃が始まるちょっと前なので、今と事情が異なりますが、このスピーチを聴いた人の大きなショック。物の考え方が大きく違っていました。博士は次のように言いました。

 「人類史上、戦争の正当性に関して、地球規模の目に見える形で公に実効性を持って開かれた対話や議論が、今まで一度もなされたことがなかった。今日お招きいただいて大変光栄です。今、このような奇跡的な時代にまだ自分が生きていることに大変感動しています。」もし今、この話を聞けば、この男は何を言っているのかと思ったかもしれません。

 「全世界は今、戦争をするかどうか?重大かつ歴史的な公開討論に参加し、あらゆる視点、立場に耳を傾けています。世界の人々はこう問いかけています。

 『戦争に正当性があるのか否か』、『イラク攻撃を承認するのに十分な根拠があるのか否か』『戦争はどんな影響があるのか』、『コストは』、『戦争の後は何が起きるのか』、『この戦争の結果、どのように他の戦争や紛争が引き起されるのか』、『平和的な代替手段にどんなものがあるのか』、『まだ検討されていない交渉はあるのか』、『宣戦布告の本当の意図は何か』

 こうした議論や対話のすべてが1949年、まさしくこのような目的のために設置された国連安全保障理事会という場で行われています。私たちが国連の真の役割に気づくのに50年以上かかったわけです。しかし、歴史的な重大局面において、国連は舞台の中心にいます。今、戦争か平和かが論じられている場が他ならぬ国連である。

 国連はここ数ヶ月、とりわけ数週間、地球上もっとも強力な統治機関となっている。戦争より平和遂行の世界的努力のもっとも効果的な受け皿となっている。」この時はそうだったんですね。

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平和遂行への未曾有の事態

 「私たち国際社会は、あくまでも平和遂行という平和努力を困難ではあるが休まず継続しなければなりません。いまのところ、平和遂行の努力で功を奏していること自体、大きな歴史的偉業といえるでしょう。地球規模の議論を通して、平和を遂行するという人類史上、未曾有の事態がともあれ日々、一刻、一刻、実現している。」と博士は語っています。

 「20世紀の二つの世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争いずれをとっても、今回のようなことがこれほどの規模で戦争前に議論された例はありませんでした。地球規模で耳を傾け、意見を述べ、責任を共有するという全く新しい事態です。その過程で新しい同盟が結成されつつあります。ロシアと中国が一つの問題で同じ側に立つということは前代未聞です。フランスとドイツは協働で新しい見方に世界を見開かせようと努力しています。

 史上最大の平和バトルが展開されている。しかも最近の歴史を振り返っても、平和バトルはすでに戦争がおきてから、ベトナム戦争の場合のように開戦から数年経ってから行われるのが通例であった。」

 ですから、博士が「自分が奇跡だ」と言っているのはこのことなのですね。これこそが平和遂行の呼び名にふさわしいとも思います。

 「今後の事態がどう展開するかに関わらず、これが新しい時代の幕開けとして、歴史に記憶されることは間違いありません。21世紀の戦争に突き進もうとする一国の行動の正当性を国際社会全体の責任において、深く、根本的に問う地球規模の対話によって開かれたと確信する」

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平和への呼びかけを

 その時、このスピーチを聴いて、吃驚した人は多いと思います。私も今、改めてとても大切で前向きな考え方であると受け止めています。私自身、湾岸戦争やアフガン戦争に比べて、インターネットを含めて、通信技術や市民レベルでの情報交換の密度がめちゃくちゃ変わってきました。たとえば、ニューヨークタイムスに平和広告を掲載すれば、返ってくる反応にアメリカやイギリスが多かったことに吃驚しました。それもお互いの立場を尊重し、理解し合う、前向きの反応が沢山、戻ってきます。

 その意味からも、私は憲法の中に女性の権利、子どもの権利、環境問題を入れるべきだと考えますが、それはともかくとして、やっぱり今回もこれからも、第9条は単に日本一国の問題ではないと考えています。9条は絶対に変えてはならないという確信を、今朝の国会を見ていても強く思いました。

 今後、米英のイラク攻撃で大量破壊兵器が見つからなかった場合、世界はどうなるのか、米英はどうするのか。バグダットが市街戦になり民間人に死者や犠牲者が出てきた場合、世界はどういう方向に動いていくのか。アメリカは短期間で戦争を終結させると言うが、ベトナム戦争が如実に示しているように、長期化した場合、世界はどうなっていくのか。いろいろな問題が出てきます。

 今、私たちがやること、やらねばならないこと、また出来ることを考えた場合、具体的には、一つにはインターネットの活用。まだまだ限られていますが、たとえばアメリカのようにいろんな人種が住んでおり、イスラムやアラブの人たちにも沢山、呼びかけることができます。国連再構築のチャンスだと思います。

 使い古された組織とかと言うのではなく、発展の可能性や広がりの可能性で呼びかけ人を含めて、今まで運動に参加しなかった人やこの戦争が嫌だなあと思う人たちへの呼びかけをもっともっとするべきだと思います。今、そのチャンスだと思います。

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